住生活基本法

平成18年6月8日に住宅政策分野におけるはじめての基本法となる「住生活基本法」が施行されました。

基本法という性質上、国民の権利や義務が規定したり、裁判における規範として機能したりすることはないと考えられます。とはいえ、今後その方針に適合するようにさまざまな施策が講じられるため、他の法律を誘導する役割を果たすことになります。

基本理念

住生活基本法には4つの基本理念が示されています。

  1. 現在及び将来における国民の住生活の基盤となる良質な住宅の供給(第3条)
  2. 住民が誇りと愛着をもつことのできる良好な住環境の形成(第4条)
  3. 居住のために住宅を購入する者及び住宅の供給等に係るサービスの提供を受ける者の権益の擁護及び増進(第5条)
  4. 低額所得者、被災者、高齢者、子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を有する者の居住の安定の確保(第6条)

基本的施策

上に示した4つの基本理念に対応して、それぞれ基本的施策が掲げられました。

さらに社会資本整備審議会答申(「新たな住宅政策に対応した枠組みについて」)により具体的な施策の方向性と課題が、また住生活基本計画によって成果指標が掲げられています。

建築に関する主な施策の方向性と成果指標は下表のとおりです。

  施策の方向性 成果指標
良質な住宅ストックの形成および将来世代への承継 基礎的安全性 住宅ストックの新耐震基準適合率を75から90
高齢社会対応 共同住宅ストックの共用部のユニバーサルデザイン化率(バリアフリー化率)を10から25
地球環境対策 住宅ストックの省エネルギー対策率を18から40
適切な維持管理 リフォームの実施率を2から5
良好な居住環境の形成 住宅市街化の基礎的安全性 重点的に改善すべき密集市街地の整備率をおおむね100に地震時に危険な大規模盛り土造成地の個所数を1000カ所から500カ所に半減
多様なニーズが実現される住宅市場の環境整備 適切な情報提供 住宅性能表示の実施率(新築)を16から50
循環型市場形成
(長寿命化)
既存住宅の流通シェアを13から23に住宅の利活用期間 滅失住宅の築後年数を30から40
住宅の確保に特に配慮を有する者の居住の安定の確保 高齢者の安全・安心の確保 高齢者のいる住宅のバリアフリー化率について、一定のバリアフリーを29から75に、高度なバリアフリーを6.7から25

基本理念とそれに対応するすべての具体的な施策の方向性と課題は以下のとおり。

良質な住宅供給を図るために住宅の地震に対する安全性向上を目的とした改築促進、
住宅に係るエネルギー使用の合理化促進、住宅管理に関する知識の普及及び情報提供

1) 基本的性能確保、社会的課題への対応

  • 建築基準法をはじめとする住宅の基本性能確保
  • 住宅性能表示制度をはじめとする質の向上
  • 耐震化の推進
  • 長寿命住宅・SI(スケルトン・インフィル)住宅などの供給円滑化
  • 健康に配慮した住まい・省エネ化の推進
  • バリアフリー化の推進
  • 防犯性の向上
  • 地域材の活用・伝統構法を生かした木造住宅の普及
  • 技術開発支援・技能者育成・廃棄物抑制・リサイクルなど生産体制の整備

2) 国民の資産価値確保の取り組みへの支援

  • リフォーム、維持管理を行いやすい仕組みづくり
  • マンション管理・建て替えの仕組みづくりと支援
  • 住宅全体の環境を維持していくためのサポート
良質な居住環境の形成を図るため、住民の共同の福祉又は利便のために必要な施設整備、
住宅市街地における良好な景観形成の促進

1) 安全性・街並みなどの快適性・コミュニティ等が良好な住環境

  • 建築協定・地区計画などによる良好な環境整備、建築敷地等の紛争処理
  • 地域、住民による街づくり(公的賃貸住宅の活用、NPO)
  • 空き住宅・住宅地のコミュニティづくりへの活用
  • 密集住宅市街地の課題解消
  • 人口減少社会を見据えた住宅
  • 市街地整備(都心・街なか居住、既存ニュータウンの有効活用、都市外延化に伴って形成された市街地の居住環境向上)
2) 生活・福祉・健康・文化等優れた居住サービスの確保
  • 保育所等福祉施設と公的賃貸住宅の併設、ケアつき高齢者住宅整備、福祉・保健等との連携
住宅の供給等に係る適正な取引の確保及び住宅の流通の円滑化のための環境の整備

1) 消費者への情報提供、取引ルール・仕組み

  • 住宅性能表示制度、住宅性能
  • 保証等の普及
  • 中古(既存)住宅取引価格や住宅ローン等の情報提供
  • リフォーム事業者の情報提供・相談体制
  • 高齢者向けの住まいのワンストップサービス
  • 賃貸住宅の入居円滑化・紛争未然防止
  • 紛争・相談に適切に対応できる仕組み

2) 多様な選択肢が提供される市場の整備

  • 都心・街なか・田園居住などライフステージ・スタイルに応じた居住地選択の自由度確保
  • ファミリー向け賃貸住宅の供給促進
  • 定期借地・定期借家等の普及
  • 中古(既存)住宅の円滑な流通

3) 資産価値保持への取り組みが適正に評価される市場の整備

  • 合理的な価格査定
  • 住宅価値の最大限の活用
  • 持ち家の賃貸化、リバースモーゲージ等の制度インフラの整備

4) 住宅金融、税制面の支援

  • 証券化による長期・固定ローンの安定的な供給支援
  • 住宅ローン減税や譲渡損失の繰越控除
居住の安定の確保のために必要な住宅の供給の促進等

1) 公的賃貸住宅の機能向上

  • 真の困窮者への公営住宅の提供
  • 公的賃貸住宅制度間の連携・弾力的運用

2) 賃貸住宅市場の整備

  • 民間賃貸住宅への入居円滑化