Eディフェンス 見学レポート 伝統的木造軸組構法の実物大住宅 性能検証震動台実験
2008年11月28日(金)および2008年12月4日(木)にEディフェンスにおいて、「伝統的木造軸組構法の実物大住宅 性能検証震動台実験」が行われました。
今回の実験では、伝統的木造軸組構法住宅の設計法を新たに開発し、改正建築基準法に基づく当該建物の審査に係る環境を整備することによって、建築物の円滑な建築に資することを目的とする事業の一環として、伝統的木造軸組構法住宅の強さの確認、設計法検証のためのデータ収集等を主な目的としています。
当社でも、2008年11月28日に開催された「B棟」の公開実験を見学してきましたので、
その様子をご紹介します。
実験概要
主 催 |
財団法人日本住宅・木材技術センター
独立行政法人防災科学技術研究所 |
実施日時
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2008年11月28日(金) |
10:30~13:00 |
…B棟 |
2008年12月4日(木) |
10:30~13:00 |
…A棟 |
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場 所 |
Eディフェンス (兵庫県三木市) |
実験目的 |
伝統的木造軸組構法住宅の設計法作成及び性能検証 |
実験棟の
概要
(B棟)
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- 伝統的木造軸組構法住宅の総2階建て。
- 主要な水平耐力要素は土壁と軸組で、筋かいはなく、仕口や継手は伝統的な納まり。
- 土壁の壁倍率を1.5 倍とした時に、1階の耐力壁量は建築基準法を満足する。 偏心率は概ね0.3 以下。
- 水平移動は拘束し上下方向は拘束しない。すなわち、柱は引き抜き力が加わると浮き上がる納まり。
- 部材の材種は、スギを基本として、土台はヒノキ、横架材の一部にマツを使用。
- 屋根形状は4寸5分勾配の切り妻屋根で、屋根仕上げは瓦葺き。ガイドライン工法とした。
- 「都市近郊型」の伝統的木造軸組構法。外周の主要な柱は通 し柱で150 角。中央の2本は管柱で150 角。1階内部に二方差しがある。外周の窓開口部に 「差し鴨居」はない。
- 1 階柱脚は、柱に対して「土台勝ち」で長ほぞ差し。1・2階柱頭は込栓打ちだが、1・2階 柱脚に込栓はない。土台は、アンカーボルトで固定し、水平及び上下の移動を拘束している。
- 土壁は、埼玉の土を使用。貫は4段を標準とし、断面27×120mm とA 棟よりも厚い。
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実験方法
(B棟) |
- 初日に、日本建築センター波(L2)を用いて、建築基準法の中地震相当及び大地震相当を、長辺方向・短辺方向に加えた。また、第2日目に、建築基準法の大地震を超える地震動として、JMA神戸波(1995 年兵庫県南部地震)を加えた。その後、建物の終局状態を確認するために、B棟にはJMA神戸波を再度加えた。
- 加振レベル
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波形 |
方向 |
入力レベル |
備考 |
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短辺 |
長辺 |
上下 |
(gal) |
(gal) |
(gal) |
1 |
BCJ-L2-20 |
1 |
20% |
|
70 |
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|
2 |
BCJ-L2-20 |
1 |
20% |
70 |
|
|
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3 |
BCJ-L2-100 |
1 |
100% |
|
355 |
|
|
4 |
BCJ-L2-100 |
1 |
100% |
355 |
|
|
|
5 |
JMA神戸 |
3 |
100% |
600 |
820 |
340 |
|
6 |
JMA神戸 |
3 |
100% |
600 |
820 |
340 |
B棟 |
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実験結果
(B棟)
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■1.BCJ-L2-20(長辺方向) |
- 損傷
損傷は見られなかった。
- 層間変形角
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単位 |
長辺方向 |
短辺方向 |
1階 |
2階 |
1階 |
2階 |
最大層間変形角 |
rad. |
1/350~1/270 |
1/470~1/380 |
- |
- |
- 応答加速度
|
単位 |
長辺方向 |
短辺方向 |
2階床 |
2階梁桁 |
2階床 |
2階梁桁 |
最大応答加速度 |
gal. |
110~120 |
160~190 |
- |
- |
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■2.BCJ-L2-20(短辺方向) |
- 損傷
損傷は見られなかった。
- 層間変形角
|
単位 |
長辺方向 |
短辺方向 |
1階 |
2階 |
1階 |
2階 |
最大層間変形角 |
rad. |
- |
- |
1/900~1/240 |
1/1200~1/280 |
- 応答加速度
|
単位 |
長辺方向 |
短辺方向 |
2階床 |
2階梁桁 |
2階床 |
2階梁桁 |
最大応答加速度 |
gal. |
- |
- |
100~130 |
120~230 |
|
■3.BCJ-L2-100(長辺方向) |
- 損傷
・土壁にひび割れが生じた。
・土壁の剥落はなかった。
・隅角部の柱脚が、数mm 浮き上がった。
- 層間変形角
|
単位 |
長辺方向 |
短辺方向 |
1階 |
2階 |
1階 |
2階 |
最大層間変形角 |
rad. |
1/50~1/35 |
1/80~1/60 |
- |
- |
- 応答加速度
|
単位 |
長辺方向 |
短辺方向 |
2階床 |
2階梁桁 |
2階床 |
2階梁桁 |
最大応答加速度 |
gal. |
500~650 |
870~1,000 |
- |
- |
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■4.BCJ-L2-100(短辺方向) |
- 損傷
・土壁にひび割れが生じた。
・土壁の剥落はなかった。
・隅角部の柱脚が、数mm 浮き上がった。
- 層間変形角
|
単位 |
長辺方向 |
短辺方向 |
1階 |
2階 |
1階 |
2階 |
最大層間変形角 |
rad. |
- |
- |
1/90~1/35 |
1/180~1/60 |
- 応答加速度
|
単位 |
長辺方向 |
短辺方向 |
2階床 |
2階梁桁 |
2階床 |
2階梁桁 |
最大応答加速度 |
gal. |
- |
- |
490~530 |
680~950 |
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■5.JMA神戸(1) |
- 損傷
・通し柱が3本、管柱が5本、曲げ破壊した。通し柱は胴差レベルで、管柱は鴨居部分で曲げ破壊した。
・土壁は、室内側の数枚が剥落した。剥落していない壁も、縦貫と横貫に沿って、ひび割れが生じた。
・隅柱の柱脚は、最大で10cm 程度浮き上がった。その他の隅角部の柱は、6㎝程度浮き上がった。管柱は2~5cm 程度浮き上がった。
・2階の土壁の剥落はなかった。
・屋根瓦に損傷はなかった。
- 層間変形角
・1階が2階に比べて層間変形角が大きかった。
・床が柔らかいため、通りによって層間変形角が違った。
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単位 |
長辺方向 |
短辺方向 |
1階 |
2階 |
1階 |
2階 |
最大層間変形角 |
rad. |
1/21~1/10 |
1/55~1/36 |
1/33~1/23
(不定構面有り) |
1/95~1/40 |
- 応答加速度
・通りごとに加速度が異なった。
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単位 |
長辺方向 |
短辺方向 |
2階床 |
2階梁桁 |
2階床 |
2階梁桁 |
最大応答加速度 |
gal. |
680~980 |
1,100~1,600 |
630~850 |
910~1,100 |
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■6.JMA神戸(2) |
- 損傷
・倒壊はしなかった。
・室内側の壁1枚が剥落した。室外側は、七通りで2枚剥落した。
・通し柱が、更に2本、胴差レベルで曲げ破壊した。
・2階の土壁の剥落はなかった。
・屋根瓦に損傷はなかった。
- 層間変形角
・1階は1/10rad.程度まで変形した。
・土壁脱落のため、測定不能箇所が多い。
- 応答加速度
・建物の剛性が下がっているため、応答加速度は、入力よりも小さかった。
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<用語解説> |
BCJ波:(財)日本建築センターで策定された設計用入力地震動
JMA Kobe波:1995年兵庫県南部地震で神戸海洋気象台で記録された地震波
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詳 細 |
加振実験映像((独)防災科学技術研究所 兵庫耐震工学研究センター) |
実験時の様子
加震前
加震後