平成25年省エネ基準 改正の概要とポイント
平成25年省エネ基準=「エネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準」(平成25年経済産業省・国土交通省告示第1号)について改正の概要とポイントを解説します。
これまでの省エネ基準と省エネルギー対策等級の対応関係
住宅部分に係る基準は、平成25年10月1日から施行されました。
ただし、平成27年3月31日までは経過措置期間として、改正前の基準を用いることができます。

改正後の省エネルギー基準の施行スケジュール

改正の概要
① 地域区分の細分化
改正前の基準ではすべての地域で、断熱性能、日射遮蔽性能の基準を設けていますが、改正後の基準では、寒冷地においては冷房期の平均日射熱取得率(ηA値)の基準が、蒸暑地においては外皮平均熱貫流率(UA値)の基準が設けられていません。

② 外皮の省エネ性能の見直し
住宅の外皮の省エネ性能
住宅の外皮の熱性能については、年間暖冷房負荷/熱損失係数(Q値)・夏期日射取得係数(μ値)から、外皮平均熱貫流率(UA値)・冷房期の平均日射熱取得率(ηA値)の基準へ変更されます。


外皮平均熱貫流率(UA値)


建物内外の温度差が1℃の場合の部位ごとの熱損失量の合計を外皮等の面積の合計で除した値をいいます。UA値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高くなります。
建物が損失する熱量の合計[W/K] = A + B + C + D + E
部位 | 損失する熱量 | |
---|---|---|
A | 屋根(天井)の熱損失量 | 屋根(天井)のU値 × 屋根(天井)の面積 × 温度差係数 |
B | 外壁の熱損失量 | 外壁のU値 × 外壁の面積 × 温度差係数 |
C | 床の熱損失量 | 床のU値 × 床の面積 × 温度差係数 |
D | 開口の熱損失量 | 開口のU値 × 開口の面積 × 温度差係数 |
E | 基礎立上りの熱損失量 | 基礎立上りのU値 × 基礎の外周長 × 温度差係数 |

外皮等面積 [m2]
= 屋根(天井) 面積 + 外壁面積 + 床面積
+ 開口面積 + 土間床面積
外皮等面積は、熱的境界となる屋根又は天井・外壁・床・開口などの外皮、及び土に接する土間床の水平部を対象としています。
※基礎の立上り(GLから400㎜以上)は面積として加算します。
【建物が損失する熱量、外皮等面積の計算に含む部位の一覧】
部位 | 屋根 (天井) | 外壁 | 床 | 開口 | 基礎 立上り | 土間床 |
---|---|---|---|---|---|---|
建物が損失する 熱量の合計 |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
外皮等面積 | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ |
▼熱貫流率(U値)
建物内外の温度差1℃の場合において1m2当たり貫流する熱量をワット(W)で示した数値です。
数値が小さいほど熱を伝えにくいことになり、断熱性能が高い部材です。
【主な部材と熱貫流率】
部材 | U値(W/m2K) |
---|---|
金属製建具:低放射複層ガラス(A6) | 4.1 |
床板(グラスウール16K、緑甲板等) | 0.4 |
大壁(グラスウール16K、合板等) | 0.5 |
▼温度差係数
部位が接する外気の区分によって係数が決まります。
外気 | 外気に通じる小屋裏 | 外気に通じる床裏 |
---|---|---|
1.0 | 1.0 | 0.7 |
平均日射熱取得率(ηA値)


冷房期に、部位ごとの日射熱取得率に面積、方位係数を乗じた値を住宅全体で合計し、外皮等面積の合計で除した値をいいます。ηA値が小さいほど日射が入りづらく、冷房効率が高くなります。
建物が取得する日射量の合計 [W/(W/m2)] = A + B + C
部位 | 日射量 | |
---|---|---|
A | 屋根(天井)の日射取得量 | 屋根(天井)のη値 × 屋根(天井)の面積 × 方位係数 |
B | 外壁の日射取得量 | 外壁のη値 × 外壁の面積 × 方位係数 |
C | 開口の日射取得量 | 開口のη値 × 開口の面積 × 方位係数 |
▼屋根(天井)、外壁のη値
▼開口のη値
fC :冷房期の取得日射量補正係数
▼主なガラスの補正前の日射熱取得率(ηd)
ガラスの仕様 | ガラスと遮蔽物によるηd | ||
---|---|---|---|
ガラスのみ | 和障子 | 外付けブラインド | |
単板ガラス | 0.88 | 0.38 | 0.19 |
複層ガラス | 0.79 | 0.38 | 0.17 |
複層Low-Eガラス | 0.40 | 0.26 | 0.11 |
▼方位係数(一部抜粋)
方位 | 地域区分 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | |
屋根・上面 | 1.0 | |||||||
北 | 0.329 | 0.341 | 0.335 | 0.322 | 0.373 | 0.341 | 0.307 | 0.325 |
北東 | 0.430 | 0.412 | 0.390 | 0.426 | 0.437 | 0.431 | 0.415 | 0.414 |
東 | 0.545 | 0.503 | 0.468 | 0.518 | 0.500 | 0.512 | 0.509 | 0.515 |
外皮等面積[m2]は外皮平均熱貫流率(UA値)の算出に用いる外皮等面積と同一です。
③ 一次エネルギー消費量
外皮の断熱性能だけでなく、暖冷房や給湯などの設備機器も含めた、建物全体の省エネルギー性能を評価する基準が追加されます。
一次エネルギーとは?
化石燃料、原子力燃料、水力・太陽光など自然から得られるエネルギーを「一次エネルギー」、これらを変換・加工して得られるエネルギー(電気、灯油、都市ガス等)を「二次エネルギー」といいます。
建築物では二次エネルギーが多く使用されており、それぞれ異なる計算単位(kWl、l、MJ等)で使用されています。それを一次エネルギー消費量へ換算することにより、建築物の総エネルギー消費量を同じ単位(MJ、GJ)で求めることができるようになります。
一次エネルギー消費量の求め方

建築物に導入される設備機器の仕様から年間の設計一次エネルギー消費量を算出し、これを基準一次エネルギー消費量と比較することにより判断します。
基準一次エネルギー消費量 EST = (ESH+ESC+ESV+ESL+ESW+EM)×10-3
E SH | 暖房設備の基準一次エネルギー消費量[MJ/年] |
---|---|
E SC | 冷房設備の基準一次エネルギー消費量[MJ/年] |
E SV | 換気設備の基準一次エネルギー消費量[MJ/年] |
E SL | 照明設備の基準一次エネルギー消費量[MJ/年] |
E SW | 給湯設備の基準一次エネルギー消費量[MJ/年] |
E M | その他の設備の基準一次エネルギー量(家電など)[MJ/年] |
設計一次エネルギー消費量 ET = (EH+EC+EV+EL+EW+EM-ES)×10-3
E H | 暖房設備の設計一次エネルギー消費量[MJ/年] |
---|---|
E C | 冷房設備の設計一次エネルギー消費量[MJ/年] |
E V | 換気設備の設計一次エネルギー消費量[MJ/年] |
E L | 照明設備の設計一次エネルギー消費量[MJ/年] |
E W | 給湯設備の設計一次エネルギー消費量[MJ/年] |
E M | その他の設備の設計一次エネルギー量(家電など)[MJ/年] |
E S | 太陽光発電等による発電量(売電は除く)[MJ/年] |
▼基準一次エネルギー消費量(E ST )の各項目の計算方法
E SH = | (1)住戸全体を暖房する場合
地域区分、暖房方法の区分毎の係数(α SH,all ) × 住戸の床面積合計(S)
(2)居室のみを暖房する場合
地域区分、暖房方法の区分毎の係数(α SH,MR ) × 主たる居室の床面積合計(SA) + 地域区分、暖房方法の区分毎の係数(β SH,OR ) × その他の居室の床面積合計(S B )
|
---|---|
E SC = | (1)住戸全体を冷房する場合
地域区分毎の係数(α SC,all ) × 住戸の床面積合計(S)
(2)居室のみを冷房する場合
地域区分毎の係数(α SC,MR ) × 主たる居室の床面積合計(SA) + 地域区分毎の係数(β SC,OR ) × その他の居室の床面積合計(S B )
|
E SV = | 床面積合計の区分毎の係数(αSV) × 住戸の床面積合計(S) + 床面積合計の区分毎の係数(β SV ) |
E SL = | 31 × 住戸の床面積合計(S) + 169 × 主たる居室の床面積合計(S A ) + 39 × その他の居室の床面積合計(S B ) |
E SW = | 地域区分、床面積合計の区分毎の係数(α SW ) × 住戸の床面積合計(S) + 地域区分、床面積合計の区分毎の係数(β SW ) |
E M = | 床面積合計の区分毎の係数(α M ) × 住戸の床面積合計(S) + 床面積合計の区分毎の係数(β M ) |
出典:住宅・建築物の省エネルギー基準
(発行:一般社団法人日本サステナブル建築協会)